東証プライム市場に上場する企業には、「2030年までに女性役員比率30%以上」という目標が示されています。2026年3月に閣議決定された第6次男女共同参画基本計画でも、この目標が改めて成果目標に位置づけられました。
一方、2025年7月末時点のプライム上場企業の女性役員比率は17.7%です。目標までの残り期間は約4年で、多くの企業にとって計画的な対応が欠かせない状況です。
この記事では、30%目標の根拠と期限、2025年時点の達成状況、投資家側の動き、そして企業が今から取り組むべきことを、一次情報をもとに整理します。
女性役員比率30%目標の要点
結論から言うと、押さえるべき目標は次の3つです。いずれも期限は2030年です。
| 項目 | 現状(2025年) | 目標(2030年) |
|---|---|---|
| 東証プライム市場上場企業の役員に占める女性の割合 | 17.7% | 30% |
| 上場企業全体の役員に占める女性の割合 | 14.0% | 20% |
| 女性役員の登用目標を設定し、行動計画を策定している上場企業の割合 | ― | 30% |
出所は第6次男女共同参画基本計画の「成果目標等一覧」です。プライム市場だけでなく、上場企業全体にも20%という目標が置かれている点が特徴です。
なお、ここでいう「役員」には、取締役・監査役・執行役に加え、各企業が登用目標の前提とした執行役員などを含むと注記されています。自社の比率を計算するときは、どの範囲を役員とするかを先に決めておく必要があります。
目標の根拠:基本計画・東証のルール・女性版骨太の方針
第6次男女共同参画基本計画(2026年3月13日閣議決定)
男女共同参画基本計画は、政府の男女共同参画施策の基本となる計画です。第6次計画は2026年3月13日に閣議決定されました。経済分野では、企業における女性役員の登用を進めるため、上の表の成果目標が掲げられています。
東証の企業行動規範「望まれる事項」(2023年10月施行)
東京証券取引所は2023年に上場制度を整備し、プライム市場の上場内国会社について、企業行動規範の「望まれる事項」に次の内容を定めました。
- 2025年を目途に、女性役員を1名以上選任するよう努める
- 2030年までに、女性役員の比率を30%以上とすることを目指す
- 上記の目標を達成するための行動計画の策定を推奨する
「努める」「目指す」という表現のとおり、努力目標として定められたものです。ただし、取引所のルールとして明文化されたことで、各社の対応状況は投資家からも見られるようになっています。法的な位置づけの詳細は、取引所の規程や専門家に確認してください。
女性版骨太の方針2026(2026年6月25日決定)
「女性活躍・男女共同参画の重点方針2026」(通称:女性版骨太の方針)では、企業の役員や管理職への女性登用の促進が改めて示されました。女性役員の目標設定や、行動計画を策定している企業の好事例を周知する方針も盛り込まれています。
2025年時点の達成状況
内閣府の調査(2025年7月末時点)によると、プライム上場企業の女性役員比率は17.7%でした。第5次計画が掲げた「2025年に19%」には届いていません。
女性役員が一人もいないプライム上場企業の割合は2.5%です。第5次計画の成果目標は0%でした。「1名以上」はほぼ達成に近づいていますが、30%という「比率」の目標には距離があります。
内訳にも特徴があります。同じ時点で、社外役員に占める女性の割合は33.5%でした。これに対し、社内役員では5.3%にとどまります。現状の女性役員比率は、社外取締役・社外監査役の登用に大きく支えられているといえます。
女性役員の確保が難しい背景については、女性社外取締役が見つからない理由と、候補者層の広げ方で詳しく解説しています。
プライム以外の上場企業にも関係する理由
東証の「望まれる事項」は、プライム市場の上場内国会社が対象です。しかし、第6次計画では上場企業全体の目標(2030年に20%)が設けられました。スタンダード市場やグロース市場の企業も、政府目標の対象に含まれる形になっています。
また、議決権行使助言会社の基準は、プライム以外の企業にも適用されるものがあります。上場市場にかかわらず、女性役員の登用状況は株主総会の議案への賛否に影響しうる要素になっています。
投資家・議決権行使助言会社の動き
議決権行使助言会社とは、機関投資家に株主総会議案への賛否を助言する会社です。大和総研の整理(2025年12月)によると、主要2社は女性取締役に関する基準を引き上げる方針です。
- ISS:総会後の取締役会で女性取締役の割合が10%未満の場合、経営トップである取締役の選任議案に反対を推奨。2027年2月以降の適用予定とされています。
- グラス・ルイス:プライム市場では、取締役会に占める多様な性別の取締役の比率を10%以上から20%以上に引き上げ。プライム以外の市場では、2026年2月以降、「役員」ではなく「取締役」で1名以上を求める形に変わるとされています。
グラス・ルイスの変更により、プライム以外の市場では、女性の社外監査役だけでは基準を満たさなくなります。監査役会設置会社では、女性を取締役として選任できるかが論点になります。具体的な適用条件は、各社の公表資料で最新版を確認してください。
2030年に向けて企業が取り組むべきこと
2030年まで、定時株主総会の機会は限られています。目標から逆算し、次の順序で準備すると検討が進めやすくなります。
- 現状と定義の確認:自社の役員の範囲(執行役員を含めるか)を決め、現在の比率と2030年までの退任予定を一覧にします。
- 目標と行動計画の策定:東証は行動計画の策定を推奨しています。第6次計画でも、行動計画を持つ上場企業の割合を30%にする目標が置かれました。
- 役員要件の定義:経営戦略に照らして不足しているスキルを特定し、「どのような女性役員が必要か」を言語化します。方法はスキルマトリックスの作り方で解説しています。
- 社外と社内の両輪で進める:短期的には社外役員の登用、中長期的には社内の女性管理職から役員候補を育てる取り組みが必要です。
- 選任スケジュールの逆算:候補者の探索、面談、指名委員会での審議、招集通知の作成まで、総会から逆算して余裕を持って始めます。詳しくは社外取締役の選任スケジュールをご覧ください。
あわせて、2026年7月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードでも、取締役会はジェンダーなどを含む多様性と適正規模を両立させる形で構成されるべきとされています。数合わせではなく、取締役会の実効性を高める登用として説明できるかが問われます。
まとめ
- プライム上場企業は2030年までに女性役員比率30%以上、上場企業全体は20%が政府目標です。
- 根拠は第6次男女共同参画基本計画(2026年3月閣議決定)と、東証の企業行動規範「望まれる事項」です。
- 2025年7月末時点のプライム上場企業の比率は17.7%で、2025年の目標19%には届いていません。
- 議決権行使助言会社も基準を引き上げており、プライム以外の企業も無関係ではありません。
- 現状把握、行動計画、役員要件の定義、選任スケジュールの逆算を早めに進めることが重要です。
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