社外取締役の報酬はいくらが妥当か。初めて社外取締役を迎える企業や、増員を検討している企業から多い質問です。結論から言うと、公表されている調査では、社外取締役の年間報酬の平均は700万円台です。ただし、会社の規模によって400万円台から1,000万円超まで大きな幅があります。
この記事では、労務行政研究所とデロイト トーマツ グループが公表した調査データをもとに、規模別の報酬相場を整理します。あわせて、非上場企業で考えるときの注意点、会社法上の決め方、報酬水準を決める実務の手順を解説します。
数字はすべて、調査の実施年と出典を明記しています。自社の水準を検討する際の出発点としてお使いください。
社外取締役の報酬相場:調査データで見る平均額
まず、公表されている調査の数字を確認します。
労務行政研究所の「役員の報酬等に関する実態調査」(2024年調査、2024年12月公表)によると、社外取締役の年間報酬の平均は746万円でした。内訳は報酬月額62万円、年間賞与2万円です。回答は上場企業などの社外取締役398人分で、平均年齢は63.4歳です。
同じ調査の2023年版(2023年12月公表)では、平均は762万円でした。年ごとに回答企業が入れ替わるため、数字の上下は誤差の範囲も含むと考えるのが無難です。
規模別に見ると、差がはっきり出ます。
| 従業員規模 | 社外取締役(2024年調査) | 社外取締役(2023年調査) | 社外監査役(2024年調査) |
|---|---|---|---|
| 規模計 | 746万円 | 762万円 | 672万円 |
| 1,000人以上 | 1,012万円 | 951万円 | 996万円 |
| 300〜999人 | 588万円 | 678万円 | 565万円 |
| 300人未満 | 480万円 | 504万円 | 396万円 |
出典:労務行政研究所「役員の報酬等に関する実態調査」2023年・2024年。年間報酬の平均。無報酬のケースは集計から除かれています。
さらに大企業に絞ったデータもあります。デロイト トーマツ グループの「役員報酬サーベイ(2025年度版)」(2025年10月公表)です。売上高1兆円以上の企業では、社外取締役の報酬総額の中央値は1,518万円でした。前年からは2.6%の増加です。同社は、社外取締役の獲得競争を背景に報酬の上昇が目立つと分析しています。
まとめると、目安は次のとおりです。従業員1,000人未満の企業では年400万〜600万円台です。従業員1,000人以上では1,000万円前後、売上高1兆円規模の大企業では1,500万円前後です。
上場企業と非上場企業で何が違うか
上場・非上場を分けて社外取締役の報酬を集計した公表データは、確認した範囲では見当たりませんでした。上記の労務行政研究所の調査も、上場企業と一部の非上場企業をまとめて集計しています。
そのため、非上場企業が水準を考えるときは、規模別のデータを参考にするのが現実的です。たとえば従業員300人未満の平均480万円(2024年調査)は、一つの目安になります。
ただし、非上場企業には上場企業と異なる事情があります。
- 求める役割が違う:上場企業では株主に代わる監督が中心です。非上場企業では、IPO準備や事業承継、海外展開の助言など、特定のテーマを期待することが多くあります。
- 時間の使い方が違う:取締役会の回数や、委員会・個別相談の有無で、求める稼働は大きく変わります。
- 上場準備企業は上場後の水準も意識する:上場後に同じ人に続けてもらうなら、上場企業の相場とのつながりを考えておくと見直しがしやすくなります。
非上場企業でも「規模」と「期待する役割と時間」の二つを軸に考えると、根拠を説明しやすい水準になります。
報酬水準を左右する主な要素
同じ規模の会社でも、報酬は一律ではありません。水準を考えるときは、次の要素を整理します。
会社の規模と事業の複雑さ
調査データが示すとおり、規模は最も大きな要因です。海外拠点や事業の数が多いほど、社外取締役が理解すべき範囲も広がります。
担う役割(委員会・監査等委員)
指名委員会・報酬委員会の委員や委員長を務めるか。監査等委員として監査も担うか。役割が増えれば、準備や会議の時間も増えます。社外監査役と監査等委員の違いは「社外監査役と監査等委員の違い」で解説しています。
期待する専門性
スキルマトリックスで不足しているスキル(財務・法務・グローバル経営など)を補う人材は、候補者が限られることがあります。必要なスキルの整理は「スキルマトリックスの作り方」が参考になります。
候補者の兼任状況
経験豊富な候補者ほど、他社の役員を兼ねていることが少なくありません。報酬の多寡だけでなく、十分な時間を確保してもらえるかも確認が必要です。兼任の目安は「社外取締役の兼任は何社まで?」をご覧ください。
社外取締役の報酬の決め方(会社法上の手続き)
報酬の決め方は会社法で定められています。主なポイントは次のとおりです。詳細は弁護士など専門家に確認してください。
- 定款または株主総会の決議で定める:取締役の報酬等は、定款に定めがなければ株主総会の決議で定めます(会社法361条1項)。実務では、取締役全体の報酬総額の上限を総会で決めることが一般的です。社外取締役の枠を別に設ける会社もあります。
- 監査等委員は区別して定める:監査等委員会設置会社では、監査等委員である取締役とそれ以外の取締役を区別して定める必要があります(同条2項)。
- 個人別の報酬の決定方針:一定の大会社である監査役会設置会社や、監査等委員会設置会社などでは、取締役会が個人別の報酬等の決定方針を定める必要があります(同条7項)。
なお、社外取締役などの「非業務執行取締役等」とは、定款に定めを置けば責任限定契約を結ぶことができます(会社法427条)。報酬と合わせて、就任条件として整理しておく会社が多い項目です。
報酬の形態:固定報酬が中心
労務行政研究所の2024年調査では、社外取締役の年間報酬746万円のうち、賞与は平均2万円でした。報酬の大部分が月額の固定報酬だということがわかります。
社外取締役は、経営陣から独立した立場で監督することが期待されています。そのため、業績連動の報酬を大きくすると、監督する立場と利害が近づくという議論があります。株式報酬を取り入れる会社もありますが、設計にあたっては独立性とのバランスを検討するのが一般的です。
コーポレートガバナンス・コード(2026年改訂版)は、経営陣の報酬に適切なインセンティブ付けを求めています(原則4-2)。中長期的な企業価値の向上につなげるためです。社外取締役の報酬を設計する際も、自社の報酬方針全体の中での位置づけを説明できるようにしておくと安心です。
報酬水準を決める実務の手順
実際に報酬額を決めるときは、次の順で進めるとスムーズです。
- 期待する役割と時間を書き出す:取締役会の年間回数、委員会の担当、事前説明や個別面談の頻度を整理します。
- 外部データで相場を確認する:規模の近い会社の水準を、調査データや同業他社の開示資料で確認します。上場企業の役員報酬の方針は、有価証券報告書などで開示されています。
- 社内の報酬体系と整合させる:社内取締役や監査役の報酬とのバランス、総会で決めた報酬枠の範囲内かを確認します。
- 報酬委員会などで審議する:任意の報酬委員会を置く会社では、その場で根拠を含めて審議します。
- 候補者に条件を提示する:報酬額だけでなく、想定する時間、責任限定契約、D&O保険(会社役員賠償責任保険)の有無も合わせて伝えます。
選任までの全体の流れは「社外取締役の選任スケジュール」で解説しています。報酬の検討は、候補者と接触する前に済ませておくのが理想です。
まとめ
- 社外取締役の年間報酬の平均は746万円(労務行政研究所、2024年調査)。従業員1,000人以上では1,012万円、300人未満では480万円です。
- 売上高1兆円以上の大企業では、報酬総額の中央値が1,518万円です(デロイト トーマツ、2025年度版)。
- 上場・非上場を分けた公表データは限られます。非上場企業は規模別データと、期待する役割・時間から水準を考えます。
- 報酬は定款または株主総会決議で定めます。監査等委員の区別や決定方針の策定など、会社法上の手続きも確認が必要です。
- 報酬は固定報酬が中心です。額だけでなく、時間や責任限定契約など就任条件全体で整理しましょう。
報酬水準を決めるには、まず「どんな役割を、どれだけの時間で担ってほしいか」を言葉にすることが欠かせません。女性役員.comでは、スキルマトリックスから逆算して役員の要件を定義します。そのうえで、要件に合う女性の社外取締役・社外監査役・監査等委員の候補者をご紹介しています。就任が決まるまで費用はかかりません(完全成功報酬)。要件の整理から相談したい場合は、無料相談をご利用ください。