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社外取締役の兼任は何社まで?兼任数の目安と議決権行使助言会社の基準

社外取締役の候補者が、すでに他社の役員を務めている。そんなとき「何社までなら問題ないのか」と迷う担当者は多いはずです。結論から言うと、会社法に兼任社数の上限はありません。ただし、議決権行使助言会社や機関投資家は独自の基準を設けており、上場会社の役員で「4〜5社」前後が実務上の目安になっています。

この記事では、グラス・ルイスの日本向け議決権行使助言方針(2026年版)や、主要な機関投資家の議決権行使基準をもとに、兼任数の考え方を整理します。あわせて、コーポレートガバナンス・コード(2026年改訂版)の位置づけと、候補者を選ぶときの確認ポイントも解説します。

各基準は毎年のように改定されます。本文では、確認した版の年度や改定日を明記しています。

結論:法律上の上限はなく、投資家基準は「4〜5社」が目安

まず全体像です。兼任数に関するルールは、次の三つの層に分かれます。

上場会社にとって実際の影響が大きいのは、三つ目の投資家側の基準です。基準を超える候補者を選ぶと、株主総会での賛成率が下がるおそれがあります。

会社法とコーポレートガバナンス・コードの扱い

会社法:上限はないが、開示が必要

会社法には、取締役が何社まで兼任できるかという上限はありません。一方で、開示のルールはあります。公開会社が取締役の選任議案を出すときは、候補者の「重要な兼職」に当たる事実を参考書類に記載します(会社法施行規則74条2項2号)。つまり、兼任の状況は株主に見えるということです。

なお、監査役については別のルールがあります。監査役は、その会社や子会社の取締役・使用人などを兼ねることができません(会社法335条2項)。社外監査役と監査等委員の違いは「社外監査役と監査等委員の違い」で解説しています。

コーポレートガバナンス・コード(2026年改訂版)

コーポレートガバナンス・コードは、2026年7月21日に改訂版が公表されました。この改訂で、従来の補充原則は廃止され、「解釈指針」が新設されています。

兼任については、原則4-13の解釈指針に次の記載があります。「取締役・監査役が他の上場会社の役員を兼任する場合には、その数は合理的な範囲にとどめるべきである。」具体的な社数は示されていません。何社までが「合理的」かは、各社が説明することになります。

議決権行使助言会社の基準

議決権行使助言会社とは、機関投資家に対し、株主総会の各議案に賛成・反対の推奨を出す会社です。代表的なのがISSとグラス・ルイスです。

グラス・ルイス(2026年版 日本向けベンチマーク・ポリシー)

グラス・ルイスは、兼任数について具体的な基準を示しています。2026年版の日本向けガイドラインの主な内容は次のとおりです。

また2026年版では、社外取締役・社外監査役の在任が連続12年以上になると、独立性がないものとして扱う変更も入りました。独立性の考え方は「社外取締役の独立性要件とは?」で解説しています。

ISS(日本向け議決権行使助言方針)

ISSの日本向け方針の2026年の主な改定は、独立性と多様性に関するものです。大和総研の解説(2025年12月)によると、次の内容が示されています。

兼任社数について社数の数値基準を明示しているのは、上記のとおりグラス・ルイスです。ISSの基準を確認するときは、ISSが公表する最新の日本向けポリシーの原文をあわせて確認してください。

主要な機関投資家の兼任基準

機関投資家は、それぞれ独自の議決権行使基準を公表しています。兼任数について社数を明記している例を整理します。

主体(確認した版) 兼任数の基準 補足
グラス・ルイス(2026年版) 非業務執行の取締役・監査役は上場会社5社超で反対推奨の可能性。業務執行役員は上場会社2社超 グループ内は1社と数える。会社の説明を考慮
ブラックロック(日本株式インデックス運用、2026年6月改定) 4社を超える上場会社役員を兼務する社外取締役・社外監査役候補者に反対 合理的な説明があれば反対しない
T&Dアセットマネジメント(2026年4月1日改正) 上場企業の役員等の兼務が当該企業を含め5社以上の社外取締役・社外監査役候補者は選任基準に抵触 非上場企業は数えない

数え方の違いに注意が必要です。ブラックロックの「4社を超える」は5社以上を指します。T&Dアセットマネジメントは、選任議案の会社を含めて5社以上を基準にしています。どちらも、上場会社で4社までに収まっていれば基準に触れにくいと読めます。

T&Dアセットマネジメントは、出席率の基準も設けています。前年度の取締役会への出席率が4分の3以下の社外取締役候補者は、選任基準に抵触するとしています。兼任が多い人ほど、出席率もあわせて確認しておくべき項目です。

データで見る兼任の実態:女性社外取締役に集中する傾向

デロイト トーマツ グループの「役員報酬サーベイ(2025年度版)」は、兼任の実態も示しています。社外取締役の自社以外の平均兼務社数は、男性1.6社に対し、女性は2.1社でした。

同サーベイでは、社外取締役の30%以上が女性である上場企業が54%(前年比9ポイント増)に達しています。女性の社外取締役を求める企業が増える一方、候補者が一部の人に集中しやすい状況がうかがえます。同社は、兼務が過多になると十分な役割を果たせなくなることへの懸念を指摘しています。

候補者層を広げる方法は「女性社外取締役が見つからない理由と、候補者層の広げ方」で解説しています。

候補者を選ぶときの確認ポイント

兼任のある候補者を検討するときは、次の点を確認しましょう。

  1. 就任後の上場会社の役員数を数える:自社に就任した後の合計で数えます。今後の就任予定も確認します。
  2. 非上場・グループ会社を区別する:多くの基準は上場会社の役員を数えます。グループ内の兼任の扱いも基準ごとに異なります。
  3. 役割の重さを見る:取締役会議長、委員会の委員長、監査等委員などは時間の負担が大きくなります。
  4. 過去の出席率を確認する:他社での取締役会への出席状況は、招集通知などで確認できる場合があります。
  5. 長期の在任も見据える:グラス・ルイス(2026年版)では、連続12年以上在任した社外役員は独立性がないものとして扱われます。再任の見通しも含めて検討します。
  6. 株主への説明を準備する:基準を超える候補者を選ぶ場合は、選任理由や十分な時間を確保できる根拠を説明できるようにします。

法的な判断が必要な場合は、弁護士など専門家に確認してください。候補者の探し方そのものは「女性社外取締役の探し方」も参考になります。

まとめ

兼任の少ない候補者を見つけるには、すでに複数社で社外役員を務める人だけでなく、まだ社外役員の経験がない層にも目を向けることが有効です。女性役員.comでは、グローバル企業や製造業、外資系企業で経営経験を積んだ女性の候補者をご紹介しています。研修会社として、初めて社外役員に就く方の就任準備も支援しています。就任が決まるまで費用はかかりません(完全成功報酬)。候補者の要件整理から、無料相談でお気軽にご相談ください。

出典

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